SNSや口コミサイトが集客に欠かせない便利なツールとなった一方、事実無根の口コミや誹謗中傷も後を絶ちません。「集客や経営に影響が出るのではないか」「放置しても問題ないか」と悩まれる経営者の方も多いかと思います。
口コミが経営に与える影響は、業態や規模、投稿内容によって様々です。しかし、状況次第では無視できない深刻な事態を招くことがあります。本記事では、悪質な口コミが経営に与える影響と、企業・店舗が取りうる法的対応について解説します。
悪質な口コミが経営に与える影響
悪質な口コミの影響は、業態や口コミ件数によって現れ方が異なりますが、状況次第では一件の投稿が致命傷になり得ます。特に影響が大きいのは、口コミ件数がまだ少なく、かつ利用者が口コミを頼りに店選びをする業態です。
例えば、オープンから間もない飲食店を思い浮かべてみてください。ようやく常連客がつき始め、これから本格的に集客を伸ばしていこうという時期に、来店したこともない人物から事実無根の星1レビューを投稿されたとします。口コミがまだ10件に満たない段階で星1が付けば、総合評価は一気に1点台まで落ち込みます。
今や消費者の多くは、店選びの入り口として口コミサイトを開きます。とりわけ都心のように競合店がひしめき合う地域では、一軒ずつ口コミの中身を読み込む前に、まず総合評価の数字で候補を絞り込むのが一般的です。評価が1点台の店は、内容を読まれる以前に選択肢から外されてしまうのです。
経営者が日々の営業努力で積み上げてきた評判が、顔も名前も知らない第三者の一投稿によって、一夜にして覆されかねない——これが、悪質な口コミの恐ろしさです。
口コミ件数が多くても、信用毀損のリスクは残る
他方で、すでに口コミが100件、200件と蓄積された企業や店舗においては、一件の低評価が総合評価に与える影響は限定的のように見えます。そのため、悪質な投稿が混ざっていても、直ちに経営上の実害が生じないケースも少なくありません。
しかし、長期的な視点で見た場合、信用の毀損を通じて売上の低下や採用への悪影響に繋がっている可能性は否定できません。一般消費者や取引を検討する企業がどのように店舗や企業を見ているか、就活生がどのような考えで就職先を選択しているかは、経営者側から把握することは困難です。結果として、潜在的な顧客や人材が静かに離れていく事態を、経営者が認識できないまま看過してしまう可能性があります。
明らかにクレーマー気質の投稿や、一見して理不尽な内容の投稿については、消費者や就活生の側で信用性を慎重に判断している場合もあります。しかし、全ての人たちがそのような冷静な評価を行うわけではなく、ネガティブな言葉が並んでいること自体が、サイトを訪れた第三者に与える第一印象を損なう事実は否定できません。口コミ件数の多い企業や店舗であっても、悪質な投稿については削除等の対策を検討すべきケースが存在します。
悪質な口コミを放置することで生じるリスク
悪質な投稿を放置した場合、企業や店舗には以下のような多角的なリスクが生じます。
- ブランドイメージの毀損:蓄積してきた信頼が、不当な言葉によって傷つけられます。
- 顧客獲得機会の喪失:レビューを見た潜在顧客が、来店や契約を控えるようになります。
- 虚偽情報の定着:反論や対応がないことで、誤った情報が「事実」として広まります。
- 採用活動への悪影響:求職者が社名を検索した際、悪評があるだけで応募を躊躇されます。
- 従業員のモチベーション低下:現場のスタッフが自信を失い、離職の原因となることもあります。
悪質な口コミへの法的対応|削除から損害賠償まで
悪質な口コミへの法的対応は、「削除」「特定」「責任追及」という三段階で整理できます。事案の性質や目的に応じて、取るべき手段やどこまでは異なります。
多くの事案では、まず投稿自体を削除することが最優先の目標となります。
- サイト管理者への削除請求:権利侵害を理由として、サイト運営者に対して投稿の削除を求めます。任意での削除交渉が奏功しない場合は、仮処分手続による削除を検討します。
悪質性が高く、投稿者に対する責任追及まで視野に入れる場合には、投稿者を特定する手続を行います。
- 発信者情報開示請求:プロバイダやSNS事業者に対し、投稿者の氏名・住所等の開示を求めます。令和4年10月施行の改正プロバイダ責任制限法により、従来より迅速な開示が可能となりました。
投稿者を特定できた場合、以下の対応を検討します。
- 裁判外での和解交渉:弁護士が窓口となり、削除・謝罪・再発防止などを交渉します。訴訟に比べ、迅速かつ柔軟な解決が期待できます。
- 損害賠償請求:名誉毀損等を理由として、損害の賠償を求めます。ただし、営業損害の立証は実務上ハードルが高く、認められる金額も事案により様々である点は留意が必要です。
- 刑事告訴:名誉毀損罪や業務妨害罪として、警察への告訴を検討します。ただし、警察が捜査に動くかどうかは事案の悪質性や証拠状況に左右され、告訴すれば必ず立件されるというものではありません。
削除できない場合にも打てる手はある
法的手段には、それぞれ実務上のハードルがあります。権利侵害の立証が難しい事案や、削除の要件を満たさない投稿も存在します。
しかし、たとえ現時点で投稿を削除できなくとも、弁護士のアドバイスのもとで適切な公式回答を行ったり、社内の対応体制を整えたりすることで、被害の拡大や将来の炎上を防ぐことは可能です。重要なのは、事案に応じた最適な判断を行うことです。
悪質な口コミにお悩みの経営者の方は、まず一度、弁護士にご相談ください。
